脅しによる説得の効果
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恐怖で人は動かない

脅しによる説得はやめたほうがよいと思われます。
恐怖にすくみあがった人の思考は麻痺状態に陥ることがあるからです。
人は恐怖を感じたとき、自分だけは大丈夫だと言い聞かせたり情報を遮断したりして何もしないことによってストレスに対処しようとすることがあります。
営業先で相手の弱みにつけこんで「この条件でダメならお宅とは今後取引しません。他に頼むところはいくらでもあるんですからね。」などと脅して契約をとろうとした場合、相手を追い込んでしまい保留もしくは拒否される可能性を高めてしまうことでしょう。
もし契約をとれたとしても、「あの営業マンには会いたくない」という恐怖心を植えつけてしまっては後々の関係が悪くなるのは明白です。
これでは逆効果です。
ジャニスとフィッシュバックの実験

アメリカの心理学者、ジャニスとフィッシュバックがある実験を行いました。
まずメンバーを3つのグループに分け、グループごとに別々のスライドを見せ、そのあと「歯を大切にしなければいけない」と講義を行い、それぞれのグループで講義の理解度を確かめるというものです。
Aグループは、虫歯の末期症状の悲惨な画像ばかりをみせました。
Bグループは、Aほどではないですが虫歯の画像をみせました。
Cグループは、不快な画像は一切使わず、歯の成長や機能に関する画像をみせました。
するとCグループの人たちが最も理解を示す結果がでたのでした。
(※A=28%、B=44%、C=50%)
この研究からジャニスとフィッシュバックは次のような言葉を残しています。
「説得効果を高めるためには、聞き手の情緒的な緊張を高めた方がよいわけである。しかし、その情緒的な緊張も、恐怖を呼び起こすまでになっては、かえって逆効果である。」
ビジネス最強の心理術より引用
ハワード・レーベンタールらの実験

脅しによる説得について実験を行った人がもう一人います。
その人の名前はハワード・レーベンタールといいます。
彼の実験は、グループ分けした学生たちに破傷風についての講義を行い、その後破傷風の予防注射を受ける気になったか確認するというものでした。
Aグループの講義には破傷風感染の結果を示す恐ろしい画像が入ったパンフレットを使用しました。
Bグループの講義には恐ろしい画像の入っていないパンフレットを使用しました。
また、一部の学生には破傷風予防注射の具体的な受け方を教え、それ以外の学生には教えませんでした。
さらに破傷風の危険は伝えず予防注射の受け方のみを教えるCグループも作りました。
結果、破傷風の怖さを知らせ、同時に具体的な危険回避手段を添え、恐怖が和らげられた場合に限り学生たちは予防注射を受ける気になりました。
このことから恐怖を取り除くための手段が明確であればあるほど、情報の遮断や否認といった心理的な対処法に頼ることがなくなることがわかります。
もしあなたが医療関係の仕事に従事している人で患者さんが本当に危険な状態にある場合、その危険性はきちんと伝える必要があるでしょう。
だからこそこのようなケースでは、恐怖をあおることよりもキチンと恐怖を取り除ける具体的なプランを示し安心させることがとても重要になります。
窮鼠ネコを噛む
相手を説得したい場合、脅して恐怖に訴えかけるのではなく、相手のことを思いやりお互いに気持ちのよい関係を築けるように努めましょう。
相手の気持ちを理解しなければ向こうもこちらに理解を示してはくれません。
歴史的にみても恐怖で支配された国家は幾度となく滅びてきました。
もし相手に危険が差し迫っているのなら相手のことを考えて悪いことを悪いと忠告することは大切です。
しかしながら怖がらせるのではなく安心させることに重点をおくべきでしょう。
