顧客満足度
ただ満足させるだけではダメ
顧客満足度を上げる場合、知覚のコントラストを理解していなければいけません。
なぜなら「顧客満足(CS)は、購買者の期待に対する知覚された製品の有用性で決まる」からです。
これはマーケティング界の第一人者フィリップ・コトラーの言葉ですが悲しいことに現代の多くの企業が実践できていません。
例えば多くの企業は“良さそうに見える製品が売れる”と知っているため宣伝広告で過剰な期待をあおる傾向があります。
一時的にサービスの質を高めたり価格を下げたりして顧客の購買意欲を向上させようとたくらむのです。
しかしそれでは、一時的に満足するだけでもっと良い製品が出てくると顧客は簡単に心移りしてしまうのです。
事実、アメリカの有名企業AT&Tの調査によれば、商品やサービスに『満足している』と答える顧客でも、その70%はいつでも競合他社の製品に乗り換える可能性があるという結果がでています。
顧客満足度を上げお得意様を作る方法
つまり製品を購入する前に消費者が抱いた期待値を基準にして、購入後使用してみて期待以上の役割を果たせば顧客は満足し、期待以下の働きしかできなければ顧客は幻滅するという法則を知り実践しなければいけないのです。
もしあなたが営業マンとして活動しているのなら、なんとしても契約を結んでもらわなければならないシーンだからといって大げさに売り込むのは間違いです。
売り込みの段階では最低限約束できる範囲でアピールを続け、実際に契約してもらった後で約束以上の成果を出せるように努力するべきなのです。
ある調査ではトヨタ自動車の購買者は顧客満足度が高く、75%が次の車もトヨタにするつもりだと答えたそうです。
このように、製品を買うことでただ満足するだけではなく本当に喜ばしい結果を得られた人たちがあなたというブランドに深い思い入れを持ってくれるようになるのです。
恋愛への応用
これは恋愛においても応用できる一つの心理です。
付き合う前は何にでもよく気がつく優しい人だったのに、いざ付き合ってみると豹変したとなると関係をこじらせる原因になるのはお分かりいただけるでしょう。
まず興味を持ってもらうことも必要ですが、その後さらに予想を上回る一面をみせることこそが良い関係を築いていくのには重要なのです。
ちなみに“愛”は、名詞として認識されている言葉ですが物語のなかではたびたび動詞のように表現されています。
心から相手を思いやる気持ちをもって接することが何よりも大切なのです。
もし“一見さん”から“お得意様”になってほしいのであれば“間違いない約束”をして買ってもらい“約束以上の価値を提供すること”を心がけるべきなのです。
顧客満足を最大にするためにも小手先だけの販売手法を見直しましょう。
編集後記:映画のチケット代とDVD代
予告でおもしろい・決定的な・重要なシーン全てを見せてしまう映画が多いように感じます。
するとたしかに初日観客動員数や週末興行成績も増え、記録的なヒットと謳われるようになるでしょう。
しかしながら、期待に胸を膨らませながら映画館に足を運んでみても帰るころにはガッカリさせられていたなんてことも少なくありません。
そういう映画はブルーレイやDVDが発売されても購入をためらってしまいます。
それとは対照的に、全くノーマークだった映画を友達からポンと薦められ観てみると気に入ってしまいDVDを購入してしまったということもあります。
前者の映画のチケット代に対しての満足度は低く、後者のDVD代に対しての満足度は高いことがご理解いただけるでしょう。
しかしながら、もし前者の映画の予告が全く興味をそそらないものだったらどうでしょうか?おそらく私はその映画を観に映画館に足を運ぶことすらしなかったと思います。
なにごとも中庸が重要だということを肝に銘じていただきたいと思います。
※文中の「お得意様を作る」という表現に対して嫌な思いをする人もいらっしゃると思います。個人的にもこの表現は嫌いです。本来であれば「お得意様になっていただく」と書きたいところですがより文脈をわかりやすくするために“作る”と書くことにしました。ご了承ください。
※知覚のコントラストとは最初にみたものを基準にして物事を計る人間の習性です。
『マーケターは、顧客の価値と満足を高めつつ、「会社をたたき売らない」ようにしなければならない。』
―フィリップ・コトラー著 コトラーのマーケティング入門